マレーシア植林紀行
〜フタバガキを植える人達へのエール〜

9.植林地の植物(2)

植林地を植え下ると開けた谷地か沼になる。第一日目は斜面の下が谷地でヨシ原のようになっていた。遠目で見ただけなのでヨシかどうかは分からないが、何となく風にそよいでいる風情が日本のヨシ原に似ているのだ。それに「ギャッギャッギャッ」とヨシキリにそっくりな鳥の鳴き声がこの辺りから聞こえていた。

植林2日目に、作業道路のすぐ下の凄い急斜面をパートナーのTさんと植え下って行くと沼が見えた。待望の熱帯の水辺である。沼の向こう岸にマングローブが生えている。泥水に突き刺さっている杖根(じょうこん)も見た。写真も撮った。ようやく密林のイメージに浸ることができて、少し満足した。

作業道路を歩いていて、アカシアマンギョウムの林の中に、いかにも熱帯産らしい樹木を見つけていそいそとデジカメを取り出すことになる。椰子に似てすらりと空高く伸びて、それでいてエレガントな、何となく女性的な感じがする高木がある。椰子の力強い感じはない。長い幹の上の方に、目立たないがびっしりと棘が生えていて、これも美人の性格なのだ。名はニボン(nibong)、タデウスさんは高床式住宅の杭はこの木を使うのだと説明してくれた。こんなに高くはならないが似たような樹木にラタンと教えられた木があった。材質が硬く、テーブルなどの高級家具を作るという。現地の人はこの木を大切にするという。ひょっとしたら、SAFODAの人達は我々とは違った柄が黒光りしている自分用の鍬を持っていたが、この柄がラタンの木かも知れない。テンタップという背の高い木も教えてもらった。葉っぱがホオバ(朴葉)のように大きいのだ。大きいだけではない。いい香りがするので食べ物をこの葉に盛り付けたり包んだりするのだという。全く日本のホオバと同じではないか。ホオバミソならぬテンタップミソというのはないのかしら? タデウスさんは「この木は柔らかくてすぐ折れるので決して登らない」と言っていた。きっと子供の頃にこの木に登ってひどい目に会ったんだ。

  

マングローブの杖根(じょうこん)。何となく熱帯のムードが・・・      ニボン(左の背の高い木)とマングローブ(中央奥)
                                            とテンタップ(右端の広葉樹) 

                                             ニボンの首には棘がびっしりと・・・


<植林地の植物(3)>に続く