マレーシア植林紀行
〜フタバガキを植える人達へのエール〜

16.セレモニー

植林2日目にベースキャンプのテントでセレモニーが行われた。テント場はわっと人が増えた。現地の日本人学校の生徒達が先生に引率されて25名程応援に来た。マレーシアのF関係会社の応援の人達もぐっと増えた。その他貴賓席にはサバ州の高官やマレーシア・サバ州森林管理局の偉い人や日本政府の現地の領事や、それから本社の役員や、現地会社の社長、勿論我がH団長も我々の代表として貴賓席に座っている。

午前10時、セレモニーが始まった。最初に黒い服を着た人が演壇に立った。一言二言笑いを誘った後(マレーシア語なので、後ろの方でSAFODAの職員達だけが笑った)、朗々とした調子で喋り始めた。現地語である。勿論内容は分からない。ある時は語尾を延ばし、ある時は感情を込めて、実に名調子の演説である。5分か10分か、演説が終わった。我々日本人植林団は一斉に拍手した。この人が引き下がり、通訳がマイクの前に立った。「これはお祈りなので、特に訳しません」「・・・ん?そうか、これは家の建前の時の神主さんの詔のようなものだったのか」と初めて気付いた。すると拍手などして良かったのだろうか? 日本でお寺のお坊さんがお経をあげ終って、みんな拍手をするか? 牧師さんが「アーメン」と説教を終えた時に、みんなパチパチと手を叩くか? この場合はどうだったのだろうか? 後でH団長さんに聞いてみよう。

次々と貴賓席の人が挨拶に立った。外国でのセレモニーの礼儀なのだろうか、お人形や羽子板や盾や紙袋などの記念品の交換があって、記念植樹に移った。貴賓席の偉い人達が、それぞれに用意されたプレートの所まで行ってフタバガキの苗木を植えるのである。本社の役員も上着を脱ぎワイシャツ姿になって、何とリュックサックまで背負っている。中に何が入っているのだろう?今回の植林のためにしつらえたお揃いの帽子を冠って、真っ白の軍手をはめ、鍬を片手に凛々しいのである。私はしばらくテントの中の椅子に座っていたが、少し退屈になって記念植樹を見に行った。一番手前でマレーシア・サバ州の高官がかいがいしく補助を受けながら植え付けを行っている。その隣が本社の役員である。何と、一人で必死に穴を掘っている。誰の助けもない。天皇陛下のみどりの日の植樹祭の様に、鍬の先でちょちょっと盛り土を撫でるのとは違うのである。私はこのひたむきな姿勢に、感動した。そしてやっぱり手伝いもせず、私もこの穴掘りに見とれていた。はっと気付いて声を掛けた。「○○さん(本社役員の名前)!写真を一枚!」「は〜い!」と思わぬ元気な声が返ってきた。デジカメ画面は清々しい笑顔である。これでいいのだ。これがいいのだ。

  
サバ州の高官。森林官の補助を受けて   本社の役員。1人で必死の穴掘り

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