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5.木を植えるということ −森林破壊の現状と森林の効用ー
現在、熱帯林は1年間に日本の国土の4〜6割に相当する面積が失われている。世界の熱帯林は、過去には地球の陸地面積の16%を占めていたが、1975年ごろまでにその42%が伐採され、1990年には陸地面積の7%に過ぎなくなった。主な原因はアジアの熱帯林では木材生産、アフリカでは木材生産と焼畑農業、中南米の熱帯林では家畜放牧だとされている。アジアの熱帯林を見ると、タイは戦前には全国土の8割が熱帯林に覆われていたが1990年にはすでに森林面積は3割を切ってしまった。フィリピンは20世紀には国土の7割が森林であったが、今は約3割、しかも原生林は殆ど残っていない。原因は商業伐採、とくにフィリピンでは日本への輸出が極めて高いのである。
振り返って、日本の森林面積は国土の69%を占め立派な森林王国である。しかし木材の自給率はわずか18%足らず、何と8割以上を海外からの輸入に頼っている。理由は、日本では林業で食って行けないからである。日本の森林は放置され、荒れ果てている。そして、森林王国の日本だが他国の森林破壊に大きく加担しているのである。
現在、地球上で種名がついている生物の総数は141万種とされている。これらの種の半分以上は、全地表面積の3%を占めるに過ぎない熱帯雨林に分布しているとされている。この熱帯雨林の破壊による消失速度から、生物種数は年間0.16%〜0.32%ずつ減少し、30年後には熱帯林に生息する生物の5〜10%が絶滅するというFAO(国連食料農業機関)の計算もある。熱帯林の生物が1日1種以上の速度で絶滅しているのだ。
一方、森林の効用は数々あるが、今話題の1つは地球温暖化の防止である。大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が高くなればなるほど、これがビニールハウスの覆いの役割をして地球を包み込み、地表に届いた太陽エネルギーの放出を妨げる。大気中の二酸化炭素濃度は19世紀末には290ppm、1990年には350ppm、21世紀中頃には600ppmに達するといわれている。そして2100年までには全地球の気温は1.4℃〜5.8℃上昇し、海水面は9cm〜88cm上昇すると予測されている。低地は水没し、疫病が蔓延し、自然災害の頻発と農作物の不作など、被害は恐ろしく甚大なものになる。
我々の住む地球上の森林は陸地面積の28%、地球表面積のわずか9%しかない。しかしこの森林が貯留している炭素量は大気中に二酸化炭素として存在する炭素量の1.5倍にも達する。森林が自らの生命活動として光合成を行うことで大気中の二酸化炭素を吸収し、木の幹や土中に炭素として固定しているのである。森林の効用はまさにここにある。しかし逆にこの森林が破壊された場合、二酸化炭素の吸収体であり炭素貯留の場であった森林は、一転して炭素放出源としての森林に変わる。熱帯林の破壊により放出された炭素量は1980年で年間16.6億トン、これは化石燃料燃焼による世界の炭素放出量の1/4を超える量に相当する。もしこのままの速度で熱帯林が伐採され、化石燃料が使われ続けると、大気中に放出される二酸化炭素量を森林によって吸収するには、毎年オーストラリアの面積に相当するだけの植林をしなければならないという試算がある。地球温暖化を防止するには地球レベルの熱帯林問題が重要であり、われわれがマレーシアで植林する意味もここにある。
1960年代と1970年代を比べると、世界の災害の犠牲者は6倍になり、それは世界規模の自然破壊の進行と大きな関係があるという。16万人もの死者を出した今回のスマトラ沖津波地震では、マングローブ林の破壊が犠牲を大きくしたという。森林の持つ水源函養機能が森林伐採によって失われたことで大洪水が発生した例はいくらでもある。(注:スマトラ沖津波地震発生1ヶ月後の共同通信からの記事では、津波による死者・行方不明者は約30万人に上ると発表された)
(写真上:エコフォレストパークに向かう途中の入江のマングローブ林。移動バスの中から撮影)
<いざ出陣-植林作業第1日目->に続く