マレーシア植林紀行
〜フタバガキを植える人達へのエール〜

18.解団式

いよいよ最終日の夜、コタキナバル郊外の大きなレストランで最後の夕食会兼解団式が行われた。各班まとまって席に着くのかと思ったら、みんな思い思いの席にさっさと腰を下ろしている。私は、少し困ったなぁと思った。これでは最初の結団式の時に約束した第二班への発表ができない。しかし、正直言って、気も楽になった。私の結果発表はやりたくても出来なくなった、と自分に納得させてしまった。

日本からの植林ボランティア達は3日間の労働による達成感に酔いしれて、わいわいとオクターブが上がっている。いよいよフィナーレ近くなって事務局のMさんから「最後に各班の班長さんから感想を交えたご挨拶をお願いします」と発言があった。4班班長から順に挨拶があり、3番目に我が班長、Tさんが挨拶に立った。

「T・Mです」と言ってから、しばらく沈黙。皆な「どうしたんだろう?」と少しどよめきかける。「私たちは・・・」と続いてから「ただ、穴を掘って、苗を植えただけです」再び短い沈黙。「そのために藪を伐って整地をして、大変なご苦労があったと思います」。Tさんはにこにことして頭を下げた。挨拶は終わった。これだけだった。簡単と言うよりは、詩か俳句のように短かかった。皆なあっけにとられて、拍手も忘れてしまった。しかし聞け!この簡潔にして万感の思いを秘めた言霊を! そう、我々は熱帯の地で、穴を掘り苗を植えて、事実大汗をかいた。そしてそれだけの達成感を感じることができた。しかし、しかしだ。そのもっともっと奥のほうで、我々の見えなかったところで、我々のかいた汗の何十倍、何百倍の汗をかいていた人達がいたのだ。その事をしっかりと胸の中で受け止めるべきだ。Tさんは静かにではあるが、こう叫んでいたのだと思った。
SAFODAの寡黙で善良な人達よ! ありがとう!・・・。

ニコニコと挨拶するT班長

<帰国>につづく