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15.バスの車窓から(1) −懐かしい風景ー
我々の宿泊場所シャングリラ・タンジュンアルから植林地までの移動はバスだった。およそ40分、ホテルのアプローチ道路から国道に出た途端、もの凄いスピードで突っ走る。いつも一緒だったTさんは、バスでも私に窓側の席を譲ってくれた。この車窓からの印象を書いて見ようと思う。
(懐かしい風景)
1日目も2日目も植林作業は午後4時に終わった。一度ベースキャンプのテントに集合、ミネラルウォーターで水分を補給してから「ああ、くたびれた〜」と言いながらぞろぞろとバスの待つ駐車場まで歩いていく。2日目も窓側に座ってガタゴトと10分程作業道路を揺られ、そして国道へとつながる曲り角に来る。この角を曲がってすぐの所で、また昨日と同じ光景を見た。
バナナの林の中に少し床の高い家が、確か2軒ある。家といっても錆びたトタン屋根のバラックで、正面から見える一軒は、入口から3段程上がった階段の向こうに暗い小さな部屋が見え、その暗がりの中に裏の出口がすっぽり白く抜けたようになって見える。この家の前が庭、というか小さな広場になっていて貧しい洗濯物が干してあったりした。
ここで今日も子供達がこけつまろびつ、真っ黒くなって遊んでいた。5人、いや6人、兄弟だろうか? 顔の表情までは読み取れなかったが、分かるのだ。その子供らの動きから、私にははっきりと分かった。子供らは楽しくて仕方がないのだ! みんなと仲良くしたくて仕方がないのだ! 黒い小さな裸足が土埃りを上げながら、追いかけ、追われ、体が跳ね回り躍動していた。ああ、ボルネオの子供達よ! 君らは世界中の誰よりも貧しくは無い。心豊かで、健康で、富んでいるのだ。
記憶が一気にさかのぼり、子供の頃に戻った。夕方、まだ「ごはんだよ〜!」と呼ばれるまでの間、兄ちゃんを追ってべそをかきながら走り回っていた、あの頃のことを・・・。